教育長通信「大河」

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ページ番号1052069  掲載日 2025年9月2日

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教育長写真

令和7年4月1日付けで、武蔵野市教育長として着任した吉原 健(よしはら たけし)と申します。

これから、教育長としての私の日ごろの思いや考えを教育長通信「大河」という形で市民の皆様と共有できればと思っています。「大河」には、大きな流れのような教育の発展・地域の教育を広く包括する大きな視野・教育の未来に向けた大きな可能性という意味を込めています。

ぜひご覧ください。

第1号 『有用性』と『至高性』

以前読んだ本の中で、『有用性』と『至高性』について書かれていました。

『有用性』とは、「役に立つこと」です。私たち人間は、これまで『有用性』を求めて、科学技術や文明社会を進化させ、絶え間ない発展を成し遂げてきました。そのおかげで、私たちの社会は便利になり、誰もが合理的な生活を享受できるようになりました。

一方で、ともすると『有用性』にとらわれて、役に立つことばかりを重宝しすぎる傾向もあったのではないかと思います。役に立つがゆえに価値のあるものは、役に立たなくなった時点で価値を失ってしまうともいえます。

一方で、『至高性』とは、「役に立つか役に立たないかに関わらず価値のあるもの」を意味します。日常の中で、「至高の瞬間」とは、それ自体が満ち足りた気持ちを抱かせてくれる瞬間です。たとえば、小さな子どもがいる人は、家に帰って見る「わが子の安らかな寝顔」であったり、仕事を終えて家路を急ぐ道すがら見上げる「月の美しさ」であったり、疲れた体に染み込む「一杯のビール」の美味しさかもしれません…。

教師の仕事でいえば、教室や廊下に溢れる子どもの笑顔やおしゃべり、子どもと交わす日々の何気ない会話やおしゃべり、ノートや問題に向き合う真剣な子どもの表情などに、真に価値のあるものが潜んでいるのかもしれません。子どもと教師で共有し合える価値のあるものは、日常の何気ない生活の中にいつも埋め込まれているのではないかと思っています。

現在のAIやロボットの加速度的な発達は、真に価値のあるものについて私たちに考えさせてくれます。AIやロボットが人間を超える日もやがて来ると言われる学説もありますが、人間の価値はそもそも『有用性』にあるのではなく、「私たちが生きていること」それ自体に大いなる価値があると思っています。

『至高性』が目指す「物事の中に直接の喜びを見出すこと」をもっと大切にする必要があるのではないでしょうか。フランスの小説家サン・テグジュペリの名作[星の王子様]の中にも、「大切なものは目に見えない…」という有名な言葉があります。忙しい日々の日常に追われて、真に大切な価値のあるものを見失わないようにしたいものです。

 

参考図書:「人工知能と経済の未来(井上智洋著)」文春新書

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