ルーマニアの民族衣装
ルーマニアの民族衣装は実用であるだけでなく芸術である アレクサンドリア・エナケスク・カンテミール
ルーマニアの民族衣装は、国内の大地域(ワラキア地方、モルドバ地方、トランシルバニア地方、バナート地方、ドブロジア地方)ごとに異なった伝統と文化を反映しながら、それぞれに特徴ある様式を保っています。
それにもかかわらず全体として統一的な構造を示しており、単純な外形と布地を、概して規則的で入念な刺繍と織りによって要所要所を重点的に装飾し、よく総体との関連を維持しながらまとまりを示しています。
ルーマニアの民族衣装は、統一的な衣装でありつつも、多様性を示しています。例えば、それは気候や生活状況(仕事服か普段着なのか)、あるいは、着る人の内面性(性別、年齢、市民性、社会性、経済性、文化的状況など)によっても決定づけられています。
A・Eカンテミール著『ルーマニアの民族衣装集』
石山彰氏によるあとがき 参照
ルーマニアの民族衣装いわゆる農民の衣装は、深くこころにとどめられた非常に古くからの道義的気質とその美的情操をよく示しています。
これらの衣装美は、それを思いつき形づくってきた幾世代にもわたるたまものであり、まじりけなく保存され、そして受け継ぎ守られてきました。
刺しゅうを施した農民のシャツ、ブラウス、手織りのスカートなどの美しさは、単なる飾りではなく民族の生活様式の歴史を示すものです。ルーマニアの娘たちは誰もが刺しゅうを習わねばならなかったし、刺しゅうの腕前が進歩してから道徳的なことを教わるほどでした。これが、母親たちによって営々と伝えられてきた秘かな遺産なのです。
A・Eカンテミール著『ルーマニアの民族衣装集』
C・Dゼレティン博士によるあとがき 参照
ワラキア地方 オルテニアの衣装
ドナウ川流域からカルパチア山脈の南麓に及ぶ一帯
【衣装の特徴】
- 材料は麻、ウール、木綿
- 模様の主体は幾何学模様であり、花柄も加わってくる
- 女性服はフォタ(fotă)という黒ウール地の四角い巻きスカート
- スモックには華やいだ刺繍
- スモックの首もとはギャザーされている
ワラキア地方 ヤロミツァの衣装
ドナウ川流域からカルパチア山脈の南麓に及ぶ一帯
【衣装の特徴】
- 材料は麻、ウール、木綿
- 模様の主体は幾何学模様であり、花柄も加わってくる
バナート地方
西カルパチア山脈以西とムレシュ川以南のセルビアとの国境に囲まれた地域。
【衣装の特徴】
- ブルガリアやセルビアなど影響をうけている
- この地方の刺繍や織物の技術は最も高度であり、極めて綿密
- とりわけ有名なのが羊皮製のコートで、男性用は袖付きで丈長
- 女性用は短い。いずれも毛側を内側にして着用し、表面には強く美しいコード刺繍が施される
ドブロジア地方
ドナウ川と黒海に囲まれた地域で、最も長くトルコ領としてとどまっていた。
【衣装の特徴】
- スカートの部分がブルニックであることが特徴。
ブルニックとは長方形の布の腰の部分にひだを寄せたもので、両端を一つにし、前の部分を少しだけかきあわせ巻き付ける。飾りは縦の縞模様で地方により色は異なるが必ず赤色がはいっている。その上にに前掛けをつける。
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